手付け放棄
解約手付
契約が成立すれば、当事者はこれを守らなければいけません。相手方に契約の不履行などの特別な事情があれば解除できますが、そうでなければ解除はできません。ですが、手付けの授受がなされた場合は、一定の条件のもと契約の解除が認められます。
■解約手付との推定
手付けには、証約手付、解約手付、違約手付の3種類があります。授受された手付けがそのどれに当たるかは、当事者の意思によって決まるのですが、契約書に何も書かれていなければ、解約手付と推定されます。
■金額の大小による効果
解約手付とされれば、一定の条件のもとで一旦成立した契約を白紙に戻す効果が認められます。例えば、5000万円の売買契約で、その1%に当たる50万円の手付けが授受されていた場合、契約の解除を認めていいかどうかという問題があります。
結論として、当事者の意思が解約手付にはしないというものでない限り、解約手付にするという推定は崩れません。また、宅建業法は,宅建業者が売主になる不動産売買では、手付けは常に解約手付となると規定しています。
■解除はいつまでにすればよいか
民法の条文では「当事者の一方が契約の履行に着手するまで」は解除できるとされています。契約の履行に着手するとは、契約内容の一部を履行し、あるいは履行をなすために必要な前提行為を行うことを言います。
■自己が契約の一部を履行したときも解除可能か
最高裁判所は、自己が履行に着手しても相手方が履行に着手するまでは、自由に解除権を行使できるとしています。これは、履行に着手していない当事者は契約を解除されても、自らは履行に着手していないので、不測の損害を受ける事はなく、また損害を受けるとしても手付けの取得により損害は賠償されるとの理由に基づくものです。
■解除に理由は必要か
相手方が履行に着手するまでは、売主は手付けを倍返しし、買主はこれを放棄することで、自由に契約を解除することができます。解除することについて、理由はいりません。
■解除すると、仲介手数料の支払はどうなるか
仲介業者の仲介手数料請求権は、当事者間に売買契約が有効に成立することによって生じるものであり、特約が無い限り、契約が履行されたかどうか、解除されたかどうかに関わらず、支払を要求されます。