引渡し前の建物減失
危険負担
売買契約の締結後、引渡しの前に建物が火事で焼けたり、地震で倒壊した場合、買主は代金を支払うのかどうかといった問題があります。この場合、減失の原因が何であるか、またそれがいつ起こったかによって違ってきます。
●売主側に故意・過失がある場合
売主には、不動産を買主に引き渡すまで、これを注意して管理する義務があります。そのため、売主やその家族が火事を出し、建物を減失・毀損させてしまった場合は、売主の善管注意義務違反となり、債務不履行責任が生じます。
建物が減失したり、毀損の程度がひどくて住めないような場合、買主は契約を解除して代金支払債務を免れるのと同時に、損害賠償も請求できます。また、一部毀損の場合は、売主にその補修を求め、同時に被った損害の賠償を請求することができます。
●売主側に故意や過失が無い場合
隣家の火事で不動産が燃えてしまったり、地震で壊れてしまった場合も、売主は買主に建物を引き渡すことはできません。ですが、この場合、売り主には建物減失に関する責任はありません。
その際、買主が代金を支払わなければいけないかどうかが「危険負担」と呼ばれる問題です。民法上では、買主は代金を支払う必要があるとされています。
●特約条項の必要性
ですが、買主が危険負担を負うとすると、買主には何の落ち度もないのに、建物は手に入らず、代金を払わないといけないので、不利益が大きすぎると言えます。
こういうリスクを回避するために、契約書に特約条項を入れておく必要があります。類燃、地震、風水害などが原因で、引渡し前に建物が減失または毀損した場合、その損害は売主が負担するといった条項を、手付金などの返還についても定めて、契約書に盛り込むことが大切です。